大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)465号 判決 1950年7月18日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人神吉正孝同佐野俊雄両名弁護人伊藤秀一及被告人増田富彦弁護人石塚揆一の各上告趣旨はいずれも末尾添附別紙記載の通りでありこれに対する当裁判所の判断は次ぎの如くである。

弁護人伊藤秀一の上告趣旨第一点について。

所論被告人等の供述が強制によるものだとの事実はこれを認むるに足る資料がないのみならず原審が被告人等の供述で証拠に採ったのは被告人等が保釈を受けてから一八ケ月を経過した後である昭和二四年一一月一日の原審公判における供述だけである。論旨は理由がない。

同第二点について。

新少年法第五二条と旧少年法第八条は全く同趣旨であるからそのいずれを適用するも判決に何等影響がない。従って論旨は採用出来ない。

同第三点について。

昭和二四年一月一日新少年法が施行された当時においては本件は既に第一審の判決も言渡され事件は控訴審に繋属して居たこと記録により明である。新少年法第四二条はまだ公訴が提起されて居ないいわば被疑事件である際検察官の採るべき措置等を規定したものであって、手続的規定であるからその施行当時また起訴のない事件についてのみ適用があるので、施行当時既に第一審判決言渡のあった本件には適用のないものである。従って論旨は理由がない。

弁護人石塚揆一の上告趣旨について。

第一点 所論の始末書に所論の様な文字の訂正があることは相違ないが右訂正が該始末書作成者以外の者によって為されたものと認むべき資料は全然ないのみならず、始末書の様な私人の作成する書類については旧刑訴第七二条の様な規定がないのであるから右始末書にある様な訂正も差支ないものである。いずれにせよ右始末書を無効とすべき理由はないからこれを証拠に採ることは少しも違法でない。従って論旨第一点は理由がない。同第二点は量刑に対する不服で上告適法の理由とならない。

よって旧刑訴第四四六条に従って主文の如く判決する。

以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例